こんにちは。TAGの林です。
今回は、現在取り組んでいるプロジェクトでの気付きについてお話しします。
虐待の負の連鎖を断ち切るために
小さな頃に虐待を受けた人は、自分の子どもにも虐待してしまう。
子どもの虐待は連鎖すると言われています。
負の連鎖を断ち切るためには、幼い頃に虐待を受けた人たちが親になるタイミングで育児支援の手を差し伸べること。
こうした複雑な事情を経て親になる人たちを支援するNPO団体があります。
現在、WEBサイトをリニューアルするプロジェクトを通じ、支援活動の認知を高め、支援が必要な人とより繋がれるためのお手伝いをしています。
この団体には、今まで支援が十分に広がっていない課題感があります。
今回のWEBサイトのリニューアルを、より支援の輪を広げていく契機にしたいところ。
ですので、このプロジェクトは単なるWEBサイトのデザインやコンテンツに留まらず、団体の活動をより広げていくプランまで提案しようと考えています。
支援が必要な人ほど、自分は支援が必要だと自覚していない
プロジェクトを通じ、児童虐待に関わる様々な立場の方からお話を聞くことができました。
虐待された子どもを預かる児童養護施設の方、行政の方、そして実際に虐待を受けた経験を持ち、育児支援を受けた方…
このプロジェクトに限らず、社会課題の現場の皆さんからお話を聞くたびに、「自分は何も知らなかった」ことを改めて思い知らされます。
様々な立場・視座からの生の声でしたので、呈された意見は一様ではありません。
そんな中、ひとつだけ共通して言われていたことがありました。
「支援が必要な人ほど、自分は支援が必要だと自覚していない」
「他人の力を借りる」ことは能力
そもそも、子育てというのは困難を伴うものです。
他ならぬ自分自身も、たくさんの人からの助けを受けて子育てをしています。
ところが、この団体が支援すべき「過去に虐待を受けた人」は、どう子育てをすれば良いか分からないけれど、どうにも動けない。
他人に助けを求めることに慣れていない、というのです。
負の連鎖の背後にあるのは、当人が「他人の力を借りる」ことができない現実です。
逆説的に言いましょう。
「他人の力を借りる」「他人の助けを得て物事を成し遂げる」というのは、それ自体が能力なのです。
少し話は変わりますが、幼い子どもの発達には3領域があると言われています。
「できない」から「できる」までの間にある、「他人の支援があればできる」という領域。
旧ソ連の心理学者、レフ・ヴィゴツキーはこれを「最近接発達領域」と名付けました。
当然、幼い子どもを支援する一番の「他人」とは、両親でしょう。
親は子どもに愛情を与える他に、この最近接発達領域を育み、「他人の力を借りる」能力をトレーニングする役割を果たしていると言えます。
それなのに、哀しいことに親からの虐待を受けてしまった子どもは愛情だけでなく、この「他人の力を借りる」能力を開発する機会すら失ったのではないでしょうか。
自分だけでやり遂げなくて良い
僕は世の中において、最後まで自分だけの力でやり遂げられるものなど、ほとんどないと思っています。
もちろん安易に投げ出さないよう「最後までやり遂げよう」という姿勢は大切ですが、なにも「自分だけで」などと制限を加える必要はありません。
どうも世間は協調性を重んじる一方で、結果については自己責任として個人に帰結させる傾向があります。
それでなくても「他人の力を借りる」ためには、自分の課題は何なのか、何を解決すれば物事が進むのか、そしてその解決能力は誰が持っているのか、適切に見極める複合的な能力が必要だったりします。
単純に「明日から助けを求めなさい」で片付く話ではないのです。
僕たちシンク・アバウト・ゴールズが目指している「半歩のお手伝い」は課題の発見、解決策の提示、解決の提供・調達という、「他人の力を借りる」セットの提供です。
迷いがある時、困難と対峙した時、まず「他人の力を借りる」こと。
そんな寛容な世界になったら良いなと願いながら、プロジェクトを進めていきます。
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